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中国貴州省とそこに住む少数民族の事を主に書いてます。また、希望工程を通して見た中国農村部の教育の現状や中国の農村の様子についても書いてます。


by sakaijiu1
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苗族の盟神探湯(くがたち)について

「苗族習慣法的遺留伝承及其現代転型研究」徐烧光著(貴州人民出版社)の「第二節 神明裁判的審判法(二)捞汤」(p76)で貴州省黄平県の苗族の間で、行われていた「烧探」=盟神探湯(くがたち)について詳しい説明をしています。

それによれば「烧探」で用いられる鍋は鉄製で出来ており直径約50センチメートル、ご飯を作る際に使われる鍋より深いとのこと。柄の付いた斧を鍋に投げ入れて、その斧を鍋の中から取り出すことで審判を下すこと。鍋の中には牛の油、粟、蜜蝋を入れてかき混ぜ、火を点けその後で斧を鍋の中に投げ入れるそうです。(p78)

興味深いのは、「烧探」が行われた次の日に手に火傷による水膨れがあるか、無いかで審判を下すと言う点です。何故か分かりませんが貴州省黄平県の苗族で行われた「烧探」では二日目に判断したとのことです。

剣河県の苗族の場合には、お湯が沸くと鍋の中に米、粟、牛の油を入れたそうで、お湯だけとは限らなかったようです。「第二節神明裁判的審判法(二)捞汤」より(p79)

私が盟神探湯と言う審判法を知った時に大変疑問に思ったことは、沸騰したお湯の中に手を入れれば、誰もが火傷をするのではないかと言う点です。ある人が火傷をして、ある人は火傷をしないようなことが実際あるのかという事ですが、次のような記述をみて、長い間疑問に思っていたことの謎が一つ解けました。

上記の本の「第三節 苗族司法的特点及文化理解 三、神判中的人判因素」の中で著者は次のように記述しています。(p88)「中国西南民族の間で行われていた捞汤の場合には、鍋の中に米(苗族、イ族)、酢(壮族)、酒などを入れて温度を下げ、油の温度が下がった状態で、手を入れたので見た目よりは温度は低いこと」

「また、斧を鍋に入れる際に斧の柄に特別な薬物を塗り油の中に入れると鍋の中の油は沸騰しているような状態になるが油の温度はそれほど高くない」

「特別な薬物を手に塗り火傷を防いだり、お湯の場合も特別な物質を鍋に入れてお湯が沸いているような状態にしたそうで、そうすると沸点に達する前にお湯が沸騰しているような状態になった」そうです。

従ってそれほど温度も高くなかったようです。日本でも古代に盟神探湯が行われたとの記述があるそうですがどうだったんでしょうか?
by sakaijiu1 | 2010-02-26 02:49 | 苗族と祭り